突然ですが、
「あなたは「五感」について脳科学者達が作った間違った勉強法を植え付けられています」
人間は簡単に洗脳される生き物なのです。「社会的権威」という心理作用は絶大で、「白衣を着ている」「脳科学者」「有名な学者」というだけで、あなたの疑問は全て取り払われ、無条件で全てを信じ込んでしまいます。まず、五感を学習に取り入れることに対して脳科学者たちが作り上げた洗脳をブチ壊さなければなりません。
もう一度、この言葉を思い出してください。
「大衆は間違っている」と。
テレビで言っていることを鵜呑みにして、みんなと同じようなことをやっても周りと一緒の一般人止まりです。
脳科学者が提唱している勉強法に次のようなものがあります。
歩き回りながら、音楽を聴きながら、手を動かしながら、そして、口ずさみながら「五感をフルに使って勉強をしましょう」というものです。
これは、全くの間違いであると言う事に気がつかなければなりません。
ちょっと次のような場面を思い出してください。
「あなたは走りながら何かを考えていたとき、それを覚えていたでしょうか?」
「音楽を聴きながら、何かを考えていた事を覚えていたでしょうか?」
「今までどれだけの文字を書いたでしょうか?どれくらい覚えていますか?」
これらの行為が本当に記憶を助けることに繋がるのか、考えてもらいたいのです。いろいろな五感を感じながら、入ってきた情報は果たして、脳は重要なものと捉えるのでしょうか?
五感の刺激があればあるほど良い訳ではないと言う事です。
そもそも、刺激は「忘却を加速させる」ものでしたよね・・・。さらに余計な刺激は「集中力」も奪ってしまいます。「五感」は下手な使い方をすると記憶においてマイナスの要素にしかなりません。
五感を使う学習が全く意味は無いのかという問に対しては、もちろん「NO」です。五感は学習にとって大いに役に立ちます。
要は五感の情報と覚えたい記憶が「リンク(関連付け)」できるかどうかで、記憶が強化されるか、忘却を加速させるかが決まると言う事なのです。
例えば、いちごを覚えたいとします。いちごという文字を何度も書くよりも、声に出して「いちご、いちご」と言うよりも、実際に見て、触って、食べて味わったほうが記憶に残りやすいのです。
見る事によっていちごに「赤」という色や丸くて先端が少しとがって房が付いている「形」のイメージ、触る事によって「ぶつぶつ」した感触、食べる事によって「甘酸っぱい」という味覚がいちごに関連付けされる事になります。全てが結びつくのです。
人間は実際に体験をしたことを記憶しやすいと言われています。体験したことを記憶する事は人間が生きていく上で必要不可欠だからです。さらには五感をフルに使って、たくさんの事を感じれば「感情」が生まれやすくより記憶に深く刻まれます。
では、世界記憶力選手権または日本記憶力選手権のトップ選手たちは、この五感をどのように使っているかを少しお話しましょう。
以前、記憶力対決をテレビでやっていたときの事です。日本記憶力選手権チャンピオンは目を瞑っていました。そして、それだけではありません。なんと、ヘッドホンをして外界からの視覚だけでなく聴覚もまたシャットダウンしていたのです。不必要な刺激は避けていることが分かります。もちろん、集中力を研ぎ澄ませるためと言うのもあるでしょう。
また、世界記憶力選手権8回優勝のドミニク・オブライエンは「記憶に自信のなかった私が世界記憶力選手権で8回優勝した最強のテクニック」第7章「脳をだますテクニック」で次のような記述があります。
自分自身を物語に登場させることで~ボードに乗っているのは私ではなく、あなただ~脳に、あたかもこれが実際に自分に起こっていることのように思わせる。しかし生き生きとしたイメージを描かないと、脳はなかなか現実のことだとは思わない。だから五感を総動員することが大切である。
このことからも分かるように、五感はイメージを作り、仮想現実として自分自身に体験させるために使っているのです。
五感を使い仮想現実を作り出すテクニックは記憶術の上級テクニックです。「ストーリー法」と呼ばれています。さらに、それをさらに進化させコースをめぐって順にストーリー展開させるテクニックを「ジャーニー法」と言います。
岳伸塾では、これらの高度な記憶術をほとんど使いません。
以前にも話したとおり、「トレーニング」やイメージを作り出す「準備」が必要になるからです。また、空想や想像する事が楽しいと思える心を持てるかで適性にも大きく左右します。受験生で時間に余裕がなく、尻に火がついている状態で、そんな余裕は無いでしょう。
すべての生徒が積極的に取り入れるのには向いていないと僕は考えています。
ではなぜ五感の話をしたのかと言うと、
「ストーリー法などの高等技術を知らずに、五感を安易に利用するべきではない」と言う事を理解してもらいたかったからです。
なぜなら、テレビに登場する脳科学者の話を信じ込み「文字を読みながら(視覚を使い)、それを声に出して(聴覚を使い)、歩き回ったり」「文字を書きながら、声に出して脳に刺激を与えよう」とする生徒が絶えないからです。中には「音楽を聞きながら、勉強したほうが記憶力が良くなるとテレビで言っていた」という生徒までいるのです。
そういう子に限って、記憶力が悪いと嘆いているのが現状です。何とかしようと、健気に試行錯誤しているのは分かりますが、余計なことをしているせいでインプットばかりになっている上、見た目には落ち着きがなく集中力の無い学習者にしか見えません。記憶のトップ選手たちは決してこんな姿ではありません。
出来るだけ多くの五感を使おうとすれば、それだけ集中力は分散しますし、アウトプットや高速回転に集中することが難しくなります。また、五感によるインプットがアウトプットを阻害すると言う事を知らずに利用していれば、アウトプットの回数は大幅に減少してしまいます。また、発声をしたり、文字を書く事によって速度が犠牲になっていると言う点も見逃してはいけません。これらも正しく利用しなければ、学習効率を落とすだけになってしまいます。
記憶を深く知り、腑に落ちるまでは
「五感を断ち、目を瞑れ」
アウトプットによる高速回転に集中しましょう。